ゆりこさん

オクトパスダイビングには、ひとりだけ日本人スタッフがいる。
名前をゆりこさんというのだそうだ。
彼女はもっとレベルの高いクラスのインストラクターをしていたので、
私はなかなか話す機会が無かったのだが、
帰り道になってやっと話す機会がもてた。

彼女はひょんなきっかけでここで働くことになったのだそうだ。
このダイビングクラブのオーナーがイギリス人で、
スタッフもほとんどがイギリス人らしい。
「ただ働きをしたら、ただでライセンスをとらせてあげる。」
そういう理由で、多くの外国人が住み込みの状態でここで働くのだそうだ。

ゆりこさんもその口で始めスタッフとして働いていた。
そして、そのまま常駐のスタッフとして働くことにしたのだそうだ。
最近は、シーズン手前で、忙しいそうだ。
いつもならば、もっとスタッフがいるのだが、
シーズン前なのに、客が多いため、対応せねばならず、結構大変なんだと。

さしつかえなければ・・・と月給を聞くと、6万円ぐらいだということだった。
やっぱりやすいな・・・。と聞いていると、月5万はたまるんだそうだ。
こっちでは、多少使っても、一ヶ月1万円に生活費がいかない。
宿舎と朝、昼が支給されているので、結果的にお金がたまるのだと。
「まぁ、月5万以上ためることは不可能だけどね」
そういって彼女は笑っていた。

日本に帰るときのために、1年、もしくは半年のオープンチケットを常に持っているそうだ。
今は、たまに日本に帰るときぐらいしか旅行する暇がないそうだ。
非常に明るい人で、自由気ままな暮らしが少しうらやましい。

"幸せに生きる"ってどういうことなんだろう。
そんなふとした疑問が頭をよぎっていた。

静かな波をかっきって、船は港へと進んでいく。