トラブル

どうやら、部屋には私一人のようだった。

満杯の列車を想像していた私は、少し拍子抜けしたが、
昨日が睡眠不足だったこともあり、9時間の旅を安心してできると・・・・思っていた。

が、甘かった。(泣)

なぜか、列車には各部屋に扉がつけてあった。
僕は謎に思い、出発直前まで扉を開けておいたが、他の人は全員締めていたのである。

動き出して数分後、見知らぬ男が何食わぬ顔で、隣の席へやってきた。
「えっ!!?」
激しく動揺。全くもって怪しい。

発車した後に、乗り込んでくるなんてまったく信じられん。

そして、警戒レベルを上げた決定的瞬間がある。
スタッフがチケットを確認しにきた時のことであった。

私は何食わぬ顔でチケットを渡す。
が、男は金を渡しているのである。

「・・・・は!?」

もう、僕は9時間の旅を無睡眠で過ごすことを覚悟せねばならなくなった。
もちろん、ノートPCなんてだせるわけもない。
なぜなら、そこは月収30USドルの世界なのである。
ノートPCなんて出した日にゃ、隣の男が5年分の年収の代物を持っていることになる。

そして、男は僕がデジカメを取り出すと、目を丸くして見、
そして、いくらか?と聞いてきた。
200USドルだと答えると、目の色が変わっていたような気がした。

その10分後、友達だと称し、わけのわからんやつを3人部屋に呼んできた。
「。。。マジで勘弁してくれ」

こうなると、盗まれるだけでなく、身の危険を本気で考えた私は、
そいつらをにらみつけまくって、ほとんどの話を無視した。

結局、その友達とやらは出て行き、私は事なきを得たが、
その後、迷わずドアは完全に閉めるようにし、
部屋の中でもおじさんと二人きりになるようにした。

複数人では勝ち目がない。

荷物は極力いじらず、荷物が重い中、なぜか今までもってきた、
長編経済小説を読みふける。(こんな時に役に立つとは思わなかったが)
窓からの雄大な自然だけが、心をいやしてくれる。

そんな緊張感の中、列車は着実に進んでいったのであった。